CD
Track List
Track01 祝世アポトーシス
Track02 ミテグラ
Track03 ユニアリルド
Track04 Imitation Flowering
Track05 冥界戯曲/玖-信じるものは×××-
Track06 Analogical Sorrow
Track07 アナセマ-anathema-
※音質を落としている試聴となります。
各ショートverはツイッターなどで公開しておりますので是非お聴き下さい
あらすじ
からりと音がなる。
「なんや、あんさんが来はるなんて珍しいなぁ」
目を見開いて、店主は言った。
「まあたまには、ね」
客としてやってきた男は、そっけない返事を返しつつ、店内を見回している。
物珍しげ、というよりは、値踏みするかのような視線で。
ここは、冥界のとある場所に存在している薬屋だった。多種多様の薬を売る、薬屋。
店主の作る薬はとてもよく効くと有名でありその効能と噂を聞きつけ、千差万別の客がやってくる。年季の入った薬棚が部屋を覆うように聳えたその部屋の中央にはぺたりぺたりと貼られた薬の宣伝のポスター。
カウンターには磨かれたガラスケースの中に様々な漢方薬が静かに眠っており、木の根っこや木の実が重力に逆らいながら漬けられていた。
「てか、どないしはったん? そっちにはお薬行商しとるのに」
「……別に? それよりせっかく来てやったんだからさ、何か面白い話とかないの? 私が退屈しないようにもてなすくらいの気は利かせてほしいよね」
取り立てて、来てほしいと思った覚えなど無い……などと口が裂けても言えるわけがなかった。店の主人は苦笑を含みながら笑う。目の前の男は見知った人物だった。否、見知った、などという簡単な言葉では表しきれない人物だ。【彼】を知らない者など、この世界にはいない。相手は、少しでも気を損ねればたちまちこの世界から消されてしまう程度には、権限も力も持った男なのだから。
逡巡し、けれどそれは時間にしてコンマ数秒の熟考の果て、店主はにこりと笑いながら口を開いた。
「せやねぇ。自分あんまおもろい話とか無いんやけど」
「へえ。君ほど得体の知れないやつってあまりいないと思うけど」
「そんなことあらへんよぉ。自分はお薬やさんやん? じゃあ、こんな話はどうやろ。お口に合うかは分からんけど」
そんな前置きを口にし、話し始めたのは、とある人物を主軸においた、話だった。
この話は、薬屋の店主と、そこにやってきた不遜な客との間の暇つぶしに語られた与太話。
……とある人物の、とある、お話。